ローカルベンチマーク ~事業性評価との関わり~

 国は地域金融機関に対して、事業性評価を促す施策をとっています。
 ローカルベンチマーク、事業性評価のためのツールとして活用されることが期待されています。

 経済産業省のローカルベンチマークのWebサイトでは、「地域企業 評価手法・評価指標検討会」の議事要旨が公開されています。
 ローカルベンチマークに関する議論の中で、事業性評価についても言及されています。

 例えば、議事要旨には、次のような記載があります。

第3回
・事業性評価ということが言われて久しいが、私共も金融機関としてやっていかないといけないことである。
 なぜ、そのようなことが言われているというと、現場では目標が設定されているため、即ビジネスに繋がらないものについて優先度合が低くなってしまうという現実がある。ここは反省しなければならないと考えている。
・事業性評価については、取引先の実態把握の進化であり、真のリレーション・課題・ニーズの相互共有が重要であるので、そのための対話手法・具体的な事例を現場に示し、それが近道なのだと経験させて、その気づきによる相互理解による喜びなどを与えられれば、現場に浸透していくと考えている。

第7回
・(ローカルベンチマークは)基本的には、銀行を中心とする地域金融機関が融資先の事業性評価を行う際に利用されると想定される


 しかし、一般的に、こうした議事まで読む人は少ないでしょう。

 ローカルベンチマークの活用を促すための資料類、例えばローカルベンチマークのマニュアル や、ローカルベンチマークの手引きに、事業性評価の重要性や事業性評価のためのコミュニケーションツールとしての、ロカベン活用の推奨メッセージなどを盛り込んで頂くほうがいいと思います。

 ローカルベンチマーク関連の資料には、金融仲介機能のベンチマークへの言及もほとんど見当たりません。

 ちなみに、金融庁が示した金融仲介機能のベンチマークでは、事業性評価に関しては次の事項(指標)を採り上げています。

共通ベンチマーク5
 金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)

選択ベンチマーク5
 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
 
選択ベンチマーク6
 事業性評価に基づく融資を行っている与信先の融資金利と全融資金利との差

 ローカルベンチマークも登場しますが、「選択ベンチマーク」ですので、これを採用するかどうかは金融機関が決めることです。金融機関が、ローカルベンチマークを活用するのが面倒くさい、などと考えれば、採用されないことでしょう。


 経済産業省は、ローカルベンチマークを本当に普及させる意思があるのであれば、特に金融機関が自主的にローカルベンチマークを活用しようと思わせるような情報発信について、もう一工夫して頂くのがいいと思います。

 個人的には、ローカルベンチマークは、金融機関が自主的に使いたいと思うようなツールにならなければ、あまり普及しないのではないかと思います。
 事業性評価のツールとしても、各金融機関は、当局への報告・内部管理用に事業性評価シートを作るなどして、対応するにとどまるのではないかと思います。


■関連リンク
 地域金融機関に期待される役割 (金融庁監督局)
 地域金融機関による担保・保証に 依存しない融資による成長資金の供給(金融庁)

 
ローカルベンチマークと金融仲介機能のベンチマーク
 事業性評価と事業性評価融資

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