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事業性評価とは 事業性評価融資とは
事業性評価シートとは
事業性評価シート ~琉球銀行の場合~
事業性評価 ~山口フィナンシャルグループの場合~
中小企業白書と事業性評価
金融庁の金融行政方針と事業性評価
金融仲介機能のベンチマークと事業性評価
地方銀行と事業性評価
信用金庫・信用組合と事業性評価
信用保証協会と事業性評価
知財ビジネス評価書 ~知財が絡む事業性評価~
知的財産推進計画と事業性評価
事業性評価セミナーを開催しました
事業性評価の関連情報
※ローカルベンチマーク と 金融仲介機能のベンチマーク
事業性評価3級について
事業性評価とは? 事業性評価融資とは?
経済産業省や金融庁は、ローカルベンチマークや金融仲介機能のベンチマークの施策等を通じて、金融機関に事業性評価融資の強化を促しています。
事業性評価とは、金融機関が取引先企業との取引姿勢を検討するにあたり、決算データや担保・保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業内容やその将来性等を適切に評価することです。
ただし、事業性評価という言葉の定義や解釈は、金融機関ごとに行われるというのが実情でしょう。
金融庁の金融仲介機能のベンチマークに関する情報開示で、各金融機関は、言葉の定義をいくつか示しています。
例えば秋田銀行では、事業性評価とは、「企業の事業内容や成長可能性を、市場における優位性、収益性および継続性などの観点から評価し、企業との対話を通じて、個々の企業の実態に即した経営課題の解決、円滑な資金供給に結び付けていくこと。」と定義しています。
愛知銀行では、「事業性評価シートを作成し実態把握をしていること」としています。
事業性評価融資とは、文字どおり主に事業性を評価して実行される融資のことです。
企業にとっては、金融機関が事業性評価融資により積極的に取り組むことによって、資金調達の手段の幅が広がることになります。
事業性評価融資の関連商品も登場し始めました。
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事業性評価シートとは
事業性評価シートとは、金融機関が取引先の事業性評価を行うにあたって必要となる情報を記したり、自行庫内での情報連絡に用いるためのシート(様式)です。
事業性評価シートを用いている金融機関においては、それぞれが独自に工夫してシート様式・書式を作成しているようです。
簡便なものであることが好ましいという考えから、A4またはA3サイズのエクセルのシートで1枚程度のものとしていることが多いようです。
ローカルベンチマーク活用戦略会議(第4回)の議事録によれば、北都銀行の取り組みが紹介されています。
北都銀行では、独自に事業性評価シートを作成しているとのことです。
事業性評価シート作成を作成するためにローカルベンチマークを利用したり、ローカルベンチマークと事業性評価シートとの連携運用ができるように工夫しているようです。
なお、「事業性評価」のための方法論 」(信金中央金庫)によれば、”事業性評価シートの形式は信用金庫による違いが大きく、分量や詳細さ、記載情報の範囲や深さ、項目の立て方などは様々である”、とのことです。
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事業性評価シート ~琉球銀行の場合~
琉球銀行の取り組みが、かなり詳しく公開されています。
公開されている事業性評価シートの書式案は、エクセルで作られたであろう次のようなものです。
琉球銀行においては、事業性評価シートの目的として、次の2点を挙げています。
この内容としては、金融仲介機能のベンチマークとローカルベンチマークを意識したものとなっている印象です。
(1) 取引先の事業内容について理解を深め、事業性評価シートを時系列的に比較することで商流を含めたビジネスモデル変遷を確認し、必要に応じて円滑な資金供給など金融仲介機能の発揮と金融サービスの提供を行うとともに、様々なライフステージにある取引先の経営目標・課題等に応じた最適なソリューションを提供する。
(2) 事業性評価シートの作成過程において必要とされる定性項目(非財務情報)を収集・分析することにより、調査担当の「目利き力」強化を図る。また、同シートを本部でモニタリングすることで、必要に応じて各部が連携して速やかに取引先の経営課題解決策を提供し、同シート作成方法について営業店を支援する。
個人的には、「ローカルベンチマークと事業性評価」で書きましたように、ツールを作るのは極力少なくしたほうがいいように思います。作るにも、周知するにも、運用・報告するにも労力や時間、そしてコストがかかります。報告業務ばかり増えても、意味がありません。
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事業性評価 ~山口フィナンシャルグループの場合~
山口フィナンシャルグループでは、事業性評価に基づく取組みを公表しています。
山口フィナンシャルグループでは、金融仲介機能の質の向上と地方創生への更なる貢献を図るため、「コンサルティング・ファースト」を行動指針に掲げています。
この「コンサルティング・ファースト」とは、全てのお客さまに対し、まずコンサルティングから入ることを徹底したうえで、お取引先の潜在的ニーズを把握し、ニーズに合った提案でアプローチするサイクルを繰り返し回すことで、情報を蓄積しつつお取引先と強固なリレーションを構築する、というものです。
そして、事業性評価を、次のような式で表現しています。
事業性評価=[お取引先の経営実態(定量、定性)、及び持続可能性・成長性](内部環境)+[業種・業界の動向、地域の動向](外部環境)
外部環境は、企業側では見ていない・見えていないケースも多いですので、金融機関を含む外部機関が何等かの情報提供をし、コミュニケーションを図ることには意義があると思います。
また、内部環境も、企業自身では強みに気づいていないケースもありますので同様に金融機関を含む外部機関がコミュニケーションを図ることには意義があると思います。
内部環境は、企業側は金融機関とコミュニケーションを行うにあたって都合のいい情報は装飾して伝えるものの、都合の悪い情報は伏せておいたり過小評価した形で伝えることもありますので注意が必要だろうと思います。
「目利き力の発揮」という表現が使われていますが、情報を正確に引き出すためには一定程度の信頼関係を構築する必要があるでしょうから、結果が出るには少し時間が必要かも知れません。
山口フィナンシャルグループでは、方針を示し、事業性評価の定義を行い、組織も見直し、対外的にも情報を見せる決意を示していますので、改革の成果に注目したいと思います。
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中小企業白書と事業性評価
中小企業白書(2016年版)によれば、中小企業は自社と取引先や金融機関との取引振りを重視している一方で、金融機関は経営者の資質等を重視しているとのことです。
企業が現在利用している融資は、「代表者等の保証による融資」が最も多く、次いで「信用保証協会の保証付融資」、「不動産を担保とする融資」となっています。
今後借入れを希望する融資手法は、「信用保証協会の保証付融資」、「事業性評価に基づく融資」が高くなっています。
白書によれば、このことから、信用保証協会の保証付融資へのニーズは根強いものがあるが、現在の利用度合いとの比較を見ると、事業性評価に基づく融資へのニーズが強まっていると述べています。
どうなのでしょうか?
もともと企業側には「事業性評価に基づく融資」のニーズがあるものの、実態としては「代表者等の保証による融資」や「信用保証協会の保証付融資」の利用となっている、という方が妥当な見方かも知れません。
白書によれば、金融機関が重視している融資手法として、現在は「信用保証協会の保証付融資」を最も重視しており、次いで「事業性を評価した担保・保証によらない融資」、「不動産を担保とする融資」となっています。
また、今後重点を置きたい融資手法としては、「事業性を評価した担保・保証によらない融資」が最も高く、次いで「売掛債権の流動化による融資」、「動産担保による融資」と続いています。
白書によれば、このことから、現在は信用保証協会を利用しつつ、事業性評価に基づく融資にも力を入れているが、今後は事業性評価に基づく融資により重点を置きたいという意向が見られ、今後の中小企業のニーズと金融機関の方針が合致していると結論づけています。
これもどうなのでしょうか?
金融機関としては、国が事業性評価を促しているがために、アンケート調査等では当局の顔色を窺い、その意向に沿うような回答をしているという側面もあるように思います。
事業性評価がより浸透していくためには、銀行や信用金庫など金融機関の融資担当者の「目利き能力」を向上させることが欠かせないと言われます。
しかしながら、「目利き」以前に、企業から適切に情報を引き出す能力も求められると思います。
また、企業側にも自社の事業の将来性等をもっと金融機関に発信していく努力と工夫が求められると思います。
例えば、ミラサポでは、「Lesson24 金融機関を味方に成長へ! 」にて、いくつかの企業の取り組み事例を紹介しています。
中小企業が自ら、自社の事業性評価を高める機会はいろいろとあるはずです。
国がローカルベンチマークや金融仲介機能のベンチマークを活用して、企業、中小企業支援機関、金融機関、行政当局との間のコミュニケーションを円滑にしていこうと考えるのも、分かるような気がします。
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金融庁の金融行政方針と事業性評価
(1)事業性評価の推進について
金融庁が示した、平成28事務年度の金融行政方針では、事業性評価について、次のような記述があります。
”これまで当局としても、金融機関に対し、担保・保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(「事業性評価」)するよう促してきた。
特に我が国のGDPの7割強を占めるサービス業については総じて生産性向上の余地が大きく、金融機関が事業性評価を通じて、企業に有益なアドバイスとファイナンスを行い、顧客の企業価値の向上を実現することは可能である。
企業価値の向上は、経済の発展や従業員の賃金上昇による生活の安定に貢献するものであり、結果として金融機関自らの経営の持続性・安定性にも寄与すると考えられる。
このような顧客との「共通価値の創造」の重要性は多くの金融機関で既に認識されており、多くの金融機関が明らかにしている経営理念等にもこうした考え方は盛り込まれている。
しかしながら、経営陣の意識や実際の現場の取組みの深度には、金融機関によってバラツキがあるのもまた事実である。
本事務年度においては、こうした金融機関の取組みについて当局としてより包括的に実 態把握を行うとともに、2016年9月に公表した「金融仲介機能のベンチマーク」等を活用しつつ、金融機関の自己評価を促す。
また、金融機関の取組みの実態把握、「金融仲介機能のベンチマーク」等の客観的な指標等を活用し、ガバナンス、業績目標・評価、融資審査態勢等を含め、金融仲介の質の向上に向けて、経営陣と深度ある対話を実施する。
さらに、顧客自身が自らのニーズや課題解決に応えてくれる金融機関を主体的に選択することを可能とするため、金融機関の取組みについての顧客に対する積極的な情報提供に向けて環境を整備する。
こうした環境整備は、良質な金融サービスの提供に向けた金融機関間の競争の実現にもつながるものである。”
(2) 「日本型金融排除」について
金融行政方針では「日本型金融排除」の実態把握を行うとしています。
そして、それに関連して、与信判断における審査基準・プロセス、担保・保証への依存の程度(事業性評価の結果に基づく融資ができているか)という点に着目し、企業や金融機関からヒアリング等を行うとしています。
(3) 良質な金融サービスの提供に向けた競争の実現
金融行政方針では、金融機関側からの情報開示の促進等を通じた良質な金融サービスの提供に向けた競争の実現を図るとしています。
これに関し、次のような記述があります。
”金融機関が顧客本位の取組みについて十分な情報提供を行うことは、顧客が自らのニーズや課題解決に応えてくれる金融機関を主体的に選択することを可能とし、ひいては、良質な金融サービスの提供に向けた金融機関間の競争の実現にもつながる。
こうした観点から、以下の取組みを行う。
金融機関の事業性評価に基づく融資や本業支援等の組織的・継続的な取組みに ついて、優良な取組みを行っている金融機関を公表・表彰する。”
上記について、要点をまとめてみますと、次のようなことだろうと思います。
① 当局としては、事業性評価の推進が必要と考えている。
② 金融機関による事業性評価の取り組みは、金融機関の顧客企業の発展や企業価値の向上に資するため、金融機関の経営にとってもメリットをもたらす。
③ 企業側においては、事業性評価のニーズがあるため、事業性評価に前向きな金融機関を企業側が選びやすくする必要がある。
④ 上記③のために、金融仲介機能のベンチマーク等を活用する。
⑤ 当局としては、事業性評価に関する、金融機関どうしの競争を促していく。
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金融仲介機能のベンチマークと事業性評価
金融庁は、「金融仲介機能のベンチマーク」を通じて、地方銀行など地域金融機関に対して、事業性評価の推進を促しています。
金融仲介機能のベンチマークでは、事業性評価に関しては次の事項(指標)を採り上げています。
共通ベンチマーク5
金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、全与信先数及び融資額に占める割合(先数単体ベース)
選択ベンチマーク5
事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
選択ベンチマーク6
事業性評価に基づく融資を行っている与信先の融資金利と全融資金利との差
※ローカルベンチマークと金融仲介機能のベンチマーク
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地方銀行と事業性評価
地方銀行・第二地方銀行における事業性評価に関する公開情報等をお伝えします。
あおぞら銀行 「あおぞら地方創生ビジネス・事業性評価アンケート」の実施について
あおぞら地域総研 事業性評価アドバイザリー
京葉銀行の「事業性評価への取り組み」とその「事例」について
群馬銀行 「事業性評価」に係る取組み
山陰合同銀行 事業性評価への取組み
静岡銀行 地域密着型金融の取組み ~事業性評価
千葉銀行 事業性評価への取組み・経営者保証ガイドラインへの対応
筑波銀行 事業性評価への取組みについて
広島銀行の事業性評価への取組み
みちのく銀行 地域密着型金融への取り組み
山形銀行 事業性評価の展開による地域経済の活性化について
山口銀行 事業性評価に基づく取組みについて
横浜銀行 事業性評価にかかる取組み
琉球銀行 「事業性評価」に係る取組み
※事業性評価融資の関連商品
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信用金庫・信用組合と事業性評価
信用金庫・信用組合における事業性評価に関する公開情報等をお伝えします。
大阪シティ信用金庫 「事業性評価」を活用した融資保証制度
信金中央金庫 「信用金庫の事業性評価をバージョンアップするツール」
高岡信用金庫 新商品「たかしん事業性評価融資きぼう」発売のご案内
※事業性評価融資の関連商品
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信用保証協会と事業性評価
信用保証協会の事業性評価に関する情報をお伝えします。
なお、信用保証協会による信用保証の制度が、金融機関による事業性評価のインセンティブを低下させているという指摘があるようです。
私(知財経営研究社 代表)も、事業性評価の目利きをしているのは信用保証協会ではないか、と感じるようなことがございます。
信用保証制度と事業性評価との関連につきましては、次の文献が参考になります。
「信用保証制度改革に対する誤解を正す」(独立行政法人経済産業研究所/家森 信善 氏)
関連リンク
東和銀行と群馬県信用保証協会の業務提携について (連携による事業性評価)
金融機関連携型事業性評価融資保証(大阪信用保証協会)
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知財ビジネス評価書 ~知財が絡む事業性評価~
事業性を評価するにあたって、その企業が有する知的財産の価値や事業に対する影響の評価が求められる場合があります。
経済産業省・特許庁では、「知財ビジネス評価書」を公的な資金を使って作成する事業を行っています。
平成29年度の「知財ビジネス評価書」の公募が、平成29年6月19日より開始されました。
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知的財産推進計画と事業性評価
政府の知的財産戦略本部が公表した「知的財産推進計画2017」にも、事業性評価についての記述があります。
例えば次のようなものです。
”金融庁は、平成25事務年度以降、事業性評価に基づく融資の促進に取り組んでおり、平成28事務年度金融行政方針においても、「金融機関に対し、担保・保証に過度に依存することなく、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(「事業性評価」)するよう促してきた。」と記載するなど、引き続き事業性評価に基づき、顧客企業の価値向上に繋がるアドバイスやファイナンスを提供するよう、組織的・継続的な取組を促しているところである。
また、経済産業省は、地域金融機関や支援機関が、企業との対話を深め、担保や個人保証に頼らない事業性評価に基づく融資や本業支援等を行うことを促すため、2016年3月、地域企業の経営診断指標「ローカルベンチマーク」(財務情報に関する6つの指標と知的財産情報も含む非財務情報に関する4つの視点)を策定・公表した。”
”・・・特に融資における知財活用の促進のため、特許庁は、「知財ビジネス評価書」の更なる拡充・改善の取組を進めてきた。こうした「ローカルベンチマーク」や「知的資産経営報告書」、「知財ビジネス評価書」等を活用しながら、企業経営者と金融機関・支援機関等とが協調連携して、知的財産を始めとした知的資産を活用したビジネスの価値・評価を「見える化」することを通じて、事業性評価やそれに基づく融資、本業支援等の促進や、地域に波及効果の高い地域産業の活性化を図っていくことが求められている。”
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事業性評価セミナーを開催しました
私(知財経営研究社 代表)が企画部長を務めております、 城西コンサルタントグループが、金融庁の日下智晴様(『捨てられる銀行』に登場する方です)をお招きして、 「企業価値を上げる! 金融機関の事業性評価」と題した講演会(セミナー)を開催いたしました。
素晴らしいご講演でした。
地域密着型の歴史、地域金融機関が目指すべきこと、そして金融行政方針などについて解説頂きました。
金融検査マニュアルが廃止の方向であることなどもお話し頂きました。
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事業性評価の関連情報
事業性評価の手引き ( 中小企業庁)
事業性評価融資について/農業関連 (日本政策金融公庫)
事業性評価と知財ビジネス評価(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
知財金融ポータルサイト(特許庁)
地域金融機関に期待される役割 (金融庁)
地域金融機関による事業性評価について (金融庁)
地域金融機関による担保・保証に 依存しない融資による成長資金の供給 (金融庁)
地域金融機関における金融仲介の質の向上(金融庁/日下智晴氏)
事業性評価3級について(事業性評価に関する試験・テスト)
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<知財経営研究社>